吸引式乳腺組織生検(VAB)
視触診、超音波検査(エコー検査)・マンモグラフィ検査などの画像検査から、「乳がんの疑い」と判断された場合には、「針生検(はりせいけん)」を行います。
針生検とは、乳腺のしこりから組織片を採取して症状の原因を調べる「組織診」のひとつで、使用する機器によって「コア針生検(CNB)」「吸引式乳腺組織生検(VAB)」に分けられます。
吸引式乳腺組織生検(VAB)とは?
吸引式乳腺組織生検(VAB)は、バネの力と吸引力を利用して組織を切り取る検査方法です。
他の呼び方としては「吸引式乳房組織生検」「吸引式針生検」「マンモトーム生検」「バコラ生検」などがあります。
吸引式乳腺組織生検は、コア針生検(CNB)では診断が難しい石灰化病変や不明瞭なしこりなどのケースで選択します。一度に複数の組織を採取することが可能なので、検査中何度も針の出し入れをする必要がなく、診断精度の高い検査となります。また、保険適用で検査可能です。
※一般的なしこりについては、「コア針生検(CNB)」で対応可能です。
太さ3mm~6mm程度の円筒状の針が付いている専用装置を使います。局所麻酔後、皮膚を約4mm程度切開し、超音波(エコー)で観察しながら、針を病変(石灰化・しこりなど)の近くまで進めます。針先端の側面に吸引口があるので、そこから組織を採取します。採取時に器械の音はしますが、麻酔が効いているので痛みの心配はありません。病変の状態にもよりますが、検査時間は約15分~30分です。
軽いデスクワークなどは検査当日からOKです。
吸引式乳腺組織生検の特徴
吸引式乳腺組織生検の特徴として、次のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
- コア針生検では診断が難しいような石灰化病変・不明瞭なしこりに対応可能
- 外科的切開による生検と比べて、傷口が小さく乳房の変形もないので、身体的負担が少なく済む
傷口は4mm程度なので傷跡はほとんど残らず、1か月~2か月で目立たなくなります。 - 局所麻酔で痛みを抑えて実施できる
- 細胞診(細胞を採取して調べる検査)*1と比べて、たくさんの組織採取ができるので、より正確な診断が可能
*1(参考)細胞診:主に細い注射針で腫瘍を刺して、注射器で吸い出した細胞を調べる検査(穿刺吸引細胞診)。良性/悪性の判断が可能だが、がんの性質までは判定できない。局所麻酔なしで行われることが多く、患者さんの身体への負担は少なく済む。 - 病変(腫瘍)の良性/悪性の判断が可能
- 乳がんの性質(サブタイプ)*2を確認できる
*2乳がんのサブタイプ:がん細胞表面のタンパク質を調べることで、がん細胞の特徴を分類する方法。タイプでがん細胞の増殖率の強さ、再発リスク、薬への反応性が分かる。 - 外来で検査可能
【デメリット】
時間の経過とともに、自然に消えていきます。
吸引式乳腺組織生検での注意点
- 検査後1~2日程度は出血への注意が必要
吸引式乳腺組織生検での傷は約4mm程度です。細胞診・コア針生検に比べて、太い針になるため、検査後、十分に圧迫・止血しておかないと、後から再出血して周囲が黒ずむことがあります。指示がある間、圧迫は外さないようにしてください。 - 痛みは、自然に軽快していきます
検査後、しばらくは痛みを感じることがありますが、徐々に軽快していきますので、心配ありません。 - 血を固まりにくくするお薬(抗血小板薬など)を服用している場合には、事前に担当医までご相談ください
- 入浴は、検査翌日からOKです
よくある質問
吸引式乳腺組織生検の結果は、いつ分かりますか?
吸引式乳腺組織生検で行った組織検査の結果は、約10日間で分かります。
吸引式乳腺組織生検後、いつから運動しても良いのでしょうか?
吸引式乳腺組織生検での傷口は約4mm程度で、外科的切開生検と比べると小さいですが、出血リスクがあるため、検査から1週間程度は激しい運動は避けた方がよいでしょう。
院長からのひとこと
乳房のしこりに対する良悪性の判定には、針生検 (CNB) や吸引式乳腺組織生検 (VAB) が必要です。針生検 (CNB) で診断が困難な場合は、吸引式乳腺組織生検 (VAB)により精度の高い検査を行います。
当院では高い技術を持った日本乳癌学会乳腺専門医の女性医師が、局所麻酔薬を用いて実施するので、痛みは軽微です。