MEDICAL INFORMATION

乳腺・乳房の病気(陥没乳頭・乳腺炎など)

乳房の構造と働き

乳房(にゅうぼう・ちぶさ)は胸のふくらみ部分のことで、妊娠時に乳汁(母乳)を分泌する働きを担っています。
乳房は母乳(乳汁)を作る「乳腺」、乳腺を包む「脂肪組織」から成り立ちます。乳腺は乳頭から放射状に広がり、乳汁が通る「乳管」と15~20個の「乳腺葉(にゅうせんよう)」に分かれます。乳腺葉には乳汁を作る末梢組織「腺房(せんぼう)」が約10個~100個集まって、「乳腺小葉(にゅうせんしょうよう)」となり、乳腺小葉が約20~40個集まって、「乳腺葉」として乳管に繋がっています。
女性の乳房では、授乳期(出産)になると、ホルモンの作用によって腺房が発達し、母乳が産生されて、乳管を通って乳頭から分泌されます。

(図)乳房の構造

一般的に、排卵期~月経期(出血期)は女性ホルモンの分泌量が増えるので、乳腺がむくんだようになり、乳房に痛み・張り・しこりなどの症状を感じやすくなります。一方で、病気が原因となって、症状が現れている場合もあります。

当院は乳腺外科を診療するクリニックとして、次のような乳房や乳腺の症状・病気を取り扱っています。
日本乳癌学会 乳腺専門医の院長だけでなく、検査技師・スタッフも「全員女性」ですので、気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

しこり

しこりには「良性のもの」と「悪性のもの」があります。
しこりの原因には病気や女性ホルモンの変化があります。生理周期に合わせて、乳房全体に「しこり」を感じることがあります。

【考えられる主な病気】

良性のもの
  • 乳腺炎(乳汁が溜まることによる「うっ滞性」と乳頭部の傷からの細菌感染による「化膿性」がある乳腺の炎症)
  • 乳腺症(ホルモンバランスのみだれが原因となる乳腺に起こる病変の総称)
  • 嚢胞(のうほう:液体のかたまり)
  • 線維腺腫(せんいせんしゅ:正常細胞の異常増殖)
  • 葉状腫瘍(ようじょうしゅよう:稀な良性腫瘍)など
悪性のもの

痛み

ほとんどの女性に「痛み」が認められます。
しこりと同様に、生理周期や妊娠・出産後の授乳期では、女性ホルモンの分泌量の変化に伴い、生理的な乳房痛を感じることがあります。また、乳腺に関連する病気が原因となるケースもあります。

【考えられる主な病気】

乳腺炎(うっ滞性/化膿性)、乳腺症、乳がんなど

腫れ・赤み

女性ホルモンの影響を受けて、腫れ(張り)を感じることがありますが、乳がんとは直接関係ないケースがほとんどです。ただし、検査の結果、偶然乳がんが発見されることもありますので、「生理周期に関係なく腫れが続く」など気になる症状がある場合には、一度医療機関を受診しましょう。
また、乳房の赤みは乳腺に炎症を起こしているサインの可能性があるため、早めにご来院ください。

【考えられる主な病気】

乳腺炎(うっ滞性/化膿性)、乳がん(炎症性乳がん)など

乳頭分泌・陥没

乳頭からの分泌物がある場合、「分泌物の色」「分泌物が認められる乳管の数」がポイントとなります。

分泌物の色
  • 無色:悪性疾患(乳がん)の心配はありません
  • 白色:授乳中以外にも、ホルモンの影響でごく少量の乳汁は作られていますので、少量では問題ないケースが多いです。多量の場合には、女性ホルモン(プロラクチン)や脳下垂体の異常が原因となっていることがあるため、検査が必要です。
  • 暗赤色(血性):赤や黒っぽい血液が分泌された場合には、悪性(乳がん)の可能性があるため、詳しく検査する必要があります。
分泌物が認められる乳管の数
  • 複数の乳管(多孔性):通常、心配ありません。
  • 1つの乳管(単孔性):乳管内に何らかの異常がある可能性がありますので、針生検(組織診)などの精査が必要となります。

【考えられる主な病気】

高プロラクチン血症(血中プロラクチンの高値異常)、乳管内乳頭腫(乳管にできる良性腫瘍)、乳腺症、乳がんなど

また、「陥没乳頭」とは、乳頭が乳輪の内側に埋没・平坦な状態の乳首のことです。成人女性の約10人に1人の割合で、片側もしくは両側の陥没乳頭がみられます。乳頭の高さによっては、授乳に影響を及ぼすことがあります(痛み・乳腺炎リスク・赤ちゃんが吸いにくいなど)。
主な原因には生まれつき(先天性)や乳房の成長差、乳房周辺の手術の後遺症、病気によるものがあります。

皮膚のひきつれ・くぼみ

皮膚の下や乳腺内に腫瘍(良性/悪性:乳がん)ができている可能性があるため、一度詳しく検査してみましょう。

【考えられる主な病気】

乳がん、乳腺良性疾患など

脇のしこり・痛み・違和感

脇のしこり・痛み・違和感の原因には、「副乳(異所性乳腺)」の存在が関係していることがあります。
哺乳類のうち、犬・猫・牛などでは、一対以上の乳房を持っており、実は私たち人間も胎児のときまでは複数乳腺の要素を持っています。通常、出生時には退化しており「一対」となっていますが、退化せず「副乳」が残ってしまうケースがあり、女性の約1~6%に副乳があるとされています。
乳腺は女性ホルモンの影響を受けるため、妊娠・授乳時に脇の下の痛み・腫れから副乳の存在に気づかれるケースもよくあります。また、生理前・更年期などホルモンバランスの乱れから、脇にある副乳や脇の下に痛みを感じることがあります。ごく稀ですが、副乳に乳がん・乳腺腫瘍ができることもあります。
そのほか、脇の下のリンパ節の腫れ、脇の皮膚の毛穴の詰まり・細菌感染(毛包炎)、粉瘤(ふんりゅう)など、乳房や乳腺以外の病気が原因となる場合もあります。
※必要に応じて、対応病院をご紹介させていただきます。
脇の下の痛み・しこり・腫れが続く場合には、乳腺外科を受診されると良いでしょう。

【考えられる主な病気】

乳腺症、リンパ腫、転移性リンパ節など

乳首のかゆみ

乳首のかゆみは、軽く考えられがちな症状のひとつです。実際、乾燥・下着・汗などの刺激といった生活習慣・ホルモンバランスなどにより引き起こされていることも多いのですが、「乳首・乳腺の病気」が原因となっているケースもあります。
かゆみがいつまでも続いたり、かゆみ以外の症状(湿疹・赤み・痛み・しこり・分泌物など)を伴ったりする場合には、乳腺外科を受診されることをおすすめします。

乳首のかゆみの原因には、次のようなものが挙げられます。

皮膚の炎症

乳首(乳頭部)は、他の部分の皮膚と比べて薄く、非常にデリケートな部分なので、かゆくなる原因の多くは、下着の接触・摩擦、乾燥などによる「皮膚の炎症」です。
また、アトピー性皮膚炎が原因の場合には、かゆみ以外に乳首の乾燥、滲出液(分泌液)が出て、乳首がジュクジュクした状態を伴います。

ホルモンバランスの乱れ

乳房・乳腺は、女性ホルモンの影響を受けやすい部位です。生理前・排卵期などホルモンバランスの変動が起きたとき、生理不順・更年期などでホルモンバランスが乱れたときに、かゆみを感じることがあります。特に生理前は胸の痛み・張りと一緒にかゆみが出やすい傾向があります。通常、生理が始まると、かゆみは治まります。

妊娠・授乳中

妊娠・授乳中には、女性ホルモンの分泌が増えるため、肌全体が敏感になりやすく、乳房が大きくなることで乳首のかゆみを感じる場合があります。
また、授乳中は赤ちゃんが母乳を吸うため乳首の表面が傷つきやすく、母乳や赤ちゃんの唾液が付いたままになると、乳首・乳輪が荒れてしまい、かゆみに繋がることがあります。授乳前後は、乳首をきれいに拭き取るなど清潔に保つようにしましょう。

乳首・乳腺の病気

乳首や乳輪には、乾燥を防ぐための皮脂腺があります。下着などで通気性が悪くなると、細菌感染などを起こしやすくなります。

【考えられる主な病気】

接触性皮膚炎(かぶれ)、皮脂欠乏性湿疹(乾燥肌)、真菌感染症(カビの繁殖による炎症)、乳頭炎、乳がん(乳房パジェット病)など

乳房の左右差・変形

一見すると左右同じように見えますが、ほとんどの方で多少なりとも左右差はあります。
とはいえ、乳房の大きさに極端な左右差があったり、急に左右差が現れたりした場合には、乳房・乳腺の病気が原因となっていることがあるため、乳腺外科の受診をおすすめします。
また、女性の乳房は女性ホルモンの影響で生理周期に沿って、乳房が張りやすくなります。
一方、閉経すると、ホルモンの影響が極端に減って、乳腺組織から脂肪に置き換わっていくため、乳房の形も変わっていきます。

【考えられる主な病気】

乳がん、乳腺症、乳腺炎など

院長からのひとこと

女性にとって乳房の病気は身近なものですが、乳がんなど積極的な治療を要する疾患が隠れているケースもあります。
ご自身の乳房に少しでも気になることがあれば、まずは当院に気軽にご相談ください。